親知らず – 歯の進化

親知らずの抜歯

これまでの投稿でも何度か触れてきましたが、歯科治療は歯を保存し、自然な歯をそのまま使い続けられるようにする方向へと発展してきました。  しかし、痛みが生じたり問題が発生した場合、抜歯を優先的に検討する部位があります。それが、皆さんもご存じの親知らずです。  人類が火を使って調理するようになり、食材が柔らかくなったことで、奥歯、特に親知らずの役割は次第に減少し、退化する傾向にあります。


親知らずの退化

親知らずの退化は、逆説的に言えば人類が今なお進化を続けている存在であることを示しています。  親知らず(智歯、wisdom teeth)は、人類の進化の過程で変化を遂げてきた代表的な身体の部位の一つです。  初期の人類の祖先は、硬い植物の実や生肉を主に食べていたため、強い顎と多くの歯が必要でした。しかし、火の使用と調理技術の発達によって食べ物が次第に柔らかくなり、顎にかかる負担も減少しました。その結果、顎のサイズが次第に小さくなり、親知らずの役割も徐々に薄れていきました。


親知らずによる痛みと炎症

現代人は過去の人類に比べて顎のサイズが小さくなった一方で、歯の数は変わっていません。  そのため、歯が生えるためのスペースが不足し、歯が埋まったままの状態(埋伏歯, impacted teeth)になるケースが増えています。  埋伏した親知らずは、歯ぐきを突き破ろうとする動きによって周囲の組織を刺激し、痛み・炎症・感染などの問題を引き起こします。  しかし、親知らずの有無は現代人の生活に大きな影響を与えません。そのため、現代の歯科では、親知らずによる問題が発生した場合、抜歯による治療を行うのが一般的です。


人類進化の証拠

親知らずは生物学的な機能をほとんど失いつつあり、現代人の中には親知らずがまったく生えない場合もあります。これは特定の遺伝的突然変異と関連しており、研究によると特定の人口集団(アジア系およびアメリカ先住民)では親知らずがない人がより多いことが報告されています。これは自然選択によって親知らずが徐々に退化している証拠と考えられています。親知らずは進化の過程で消失する可能性があり、親知らずの遺伝的発現頻度も徐々に減少していくと予測されています。


親知らずは次に続きます。

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