インプラント – 歯科インプラントの歴史

想像以上の苦痛、歯痛

歯科治療の中で最もよく知られているのは補綴治療です。歯を維持し、修復する治療は、それだけ歯科治療の基本でもあります。歯が損傷した際に感じる痛みは、時に想像を超えるものです。トム・ハンクス主演の映画『キャスト・アウェイ』では、耐え難い歯痛により自ら歯を抜いてしまうシーンがありますが、歯痛は生活の質を著しく損なうほどの大きな苦痛を伴います。このような歯痛を解決する方法は、昔は単に抜歯することでした。しかし、その後、歯科医学の発展とともに、痛みを和らげながら歯を維持し、機能を保つ方向へと進化してきました。


古代インカ、マヤ文明のインプラント

しかし、歯の老化や事故によって失われた歯は再生しないため、人工歯、つまりインプラントを埋め込む歯科医学は、材料科学の発展とともに驚くべき医療の進歩を遂げてきました。歴史的に最も古い歯科インプラントの事例は、古代エジプトや中南米の文明でも発見されています。特に、古代インカやマヤ文明では、貝殻や石などの材料を歯の代わりに顎の骨に埋め込む試みがなされていたことが、考古学的な発掘を通じて確認されています。


チタンの骨結合現象

現代的な意味でのインプラントは、1930年代から本格的に研究され始めました。当時、歯を代替するために使用された材料は主に金属であり、ステンレス鋼や非金属合金が一般的でした。しかし、移植後に骨と適切に結合しないため、成功率は極めて低いものでした。その後、歯科インプラントにおける重要な進展は、1952年にスウェーデンの整形外科医ペール・イングヴァール・ブローネマルクが発見した骨結合(Osseointegration)の現象から始まりました。彼は実験中にチタンが骨と自然に結合することを発見し、この技術を基にチタンを用いたインプラントを開発しました。


3Dプリンティングとシミュレーション

チタンは生体親和性が高く、耐久性に優れているため、歯科インプラントの理想的な材料として定着しました。1980年代に入ると、チタンインプラントが商業化され、より多くの歯科医師がインプラント治療を試みるようになり、その成功率と安定性は大きく向上しました。現代に至って、インプラント技術はさらに進化し、さまざまな種類の材料が使用可能になり、患者に合わせたカスタマイズインプラントの設計も一般化しました。特に、コンピュータを利用した3Dプリンティング技術と治療シミュレーションにより、手術の精度と成功率は大幅に向上しました。


インプラントは次に続きます。

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